【Money】  (マネー/お金)

 "money"という言葉は、イタリア語の"moneta"から派生したと言われています。  しかし、"moneta"にはもともと「お金」の意味はなく、"advisor"(アドヴァ  イザー、忠告者)、"one who warns"(警告する人)という意味の単語でした。  ローマ神話にも、Juno Moneta という「忠告の女神」が登場します。

 紀元前390年にガリア人が侵入してきたとき、ローマのカンピドリオの丘にい  たガチョウ達が騒ぎ立ててローマの街を救ったことから、カンピドリオの丘に  忠告の女神 Juno Monetaを祭る神殿が作られました。後年、Juno Moneta の  神殿の中(または隣接した場所)にローマで最初の造幣局が建造されました。  ここで作られたコインの多くには、Juno Moneta の頭部のデザインが刻まれて  いたそうです。そして、いつしか"Moneta"が"coin"(貨幣)や"mint"(造幣  局)の意味を持つようになり、"money"の語源となったのです。  Juno Moneta の神殿は現在、サンタ・マリア・イン・アラコエリ教会となって  います。一方、ローマの造幣局は場所が変わりはしたものの、今でも造幣業務  を続けており、今年1月から流通しているユーロのコインもここで作られてい  ます。

──────────────────────────────────── 【Euro】  (ユーロ)


 このお正月にヨーロッパに行かれた方は、すでにユーロの紙幣(notes)や硬  貨(coin)を手にされたことでしょう。ユーロ紙幣は、ユーロ圏全域で共通の  デザインになっています。コンテストが行われ、オーストリア中央銀行のロベ  ルト・カリーナ氏のデザインが採用されたそうです。

 一方、硬貨は、表面は共通ですが、裏面は各国独自のデザインが施されていま  す。国別に集めてみるのも、楽しいですね。

 "Euro"は、言わずと知れた"Europe"(ヨーロッパ)から取った名前ですが、この  通貨名、最初は"ECU"(エキュ)という名称になる予定でした。しかし、以前  フランスに同じ名前の通貨があったことからドイツなどが反対し、1995年12月  にマドリードで開催されたEU首脳会議で、正式に"Euro"に決まりました。アル  ファベットのCの真ん中に=(平行線)が引かれているようなユーロ記号は、  "Europe"の頭文字"E"を想起させる、ギリシア文字のイプシロンからヒントを  得たものだそうです。真ん中の=は、ユーロの安定性を表わしています。

 "Euro" はイタリアではエウロ、ドイツではオイロのように、国によって読み  方が異なります。

 少し脱線しますが、"Europe"という単語は、ギリシア神話に登場するフェニキ  アの王女エウロペに由来する、という説をご存知ですか? エウロペは、ゼウ  スが変身した牡牛に誘拐されてクレタ島にたどり着きますが、その地にたどり  着いた人間はエウロペが初めてでした。それで、エウロペ(ヨーロッパ)と呼  ぶようになった、というのです。一方、古代フェニキア人が、自分達の住む中  近東よりも西をEreb(エレブ、日没の意)、東をAssu(アスー、日の出)と呼  んでいたことから、それぞれ "Europe"、"Asia" という語になったという説も  あります。

【ユーロ以前のヨーロッパ通貨】


 ユーロ以前の各種通貨は段々と忘れ去られていくのか、それともある時復活する  のか。それは分かりませんが、それぞれ、それなりに「由緒正しい」由来がある  ことをご存じでしょうか。

 Franc :これはフランスの通貨ですね。その他、ベルギー、ルクセンブルグ、スイスでも使われていました。表記の仕方は、フランスがFF. ベルギーはBF.ルクセンブルグではLF. スイスは SF. とそれぞれの国名を付けていました。

 フランス革命以前には、フローリンと呼ばれていましたが、それはイタリアのフィレンツェのカネだったからで、金貸し業で財をなしたメディチ家の信用力が高かったためと言われています。これは金貨でした。ちなみに、現在、銀行のことを Bank と言いますが、これは当時のメディチ家が長いテーブル(Banca)の上でカネを預かっていたからだとされています。

 革命後の1803年にフラン(又はフランク)に変えられたのですが、フランクとは、現在の英語にも残っているように、もともと「自由な民」という意味で、それが通貨名としても使われたのでした。オランダの通貨ギルダーは、オランダ語でネデルランド・ギルダーの略称で、表記はNGL となっていましたが、ダッチ・フローリンとも呼ばれ、DFL とも表記されました。フローリンは、Gulden とも書き、オランダのギルダーに影響を与えています。また、ハンガリーでもフローリンが変化したフォーリントという通貨です。

 Pound:イギリスはポンドですね。しかし、面白いことに、ポンドの記号は頭文字の P ではなく、L ですね。それはなぜでしょう。ポンドは重さの単位でもありますが、重さはラテン語で Livra といいます。リブラから変化したのが、イタリアやトルコのリラです。スペインの Peseta、フィリピン、メキシコのペソもラテン語の Peser(金の重さを量るという意味)からきた名称です。イギリス、スペイン系では、重さが重要 なのですね。

 Mark:ユーロ以前、ヨーロッパで最も強い通貨とされたのが、ドイツのマルクですね。現在でも最も愛着の高い通貨だとも言われています。このマルクというのはどういう意味かと言えば、英語のマーク、すなわち 印ないし印をつけることです(発音もドイツ語ではマルクというよりマークに近い)。ドイツは統一が遅れた、ヨーロッパの「後進国」とされることがありますね。統一以前のドイツでは、各地の領主たちが自分の領地で通用する通貨に自分たちの印を付けて、領域外との取引にも一種の「強制両替」を行っていた。

 フィンランドの通貨もマルクです。デンマークやノルウェーの通貨は Krone と言いますが、クローネとは英語の Crown に当たり、王冠を意味します。したがって、ここでも王冠のマークが通貨名となっていたのです。

 Doller :これはヨーロッパの通貨ではありませんが、英語とともに今や世界通貨とも言える、アメリカのドルです。これもポンドと同じように、頭文字とは違う S で表記されますが、それはなぜでしょう。それは もともとオランダ語でタラーとよばれた銀山の名称から来ていると言われています。銀貨であったために、Silver の S が表記として使われるようになったようです。フランスでもカネというニュアンスは Argent と言いますが、これは銀を意味しています。

 ちなみに、ギリシアのドラクマ、オーストリアのシリングの語源については、興味のある方は調べてみて下さい。ただ、古代ギリシアでは、Talent が通貨名だったようで、英語でいう「価値」や「才能」という意味とつながりがありそうですね。日本の通貨が両ではなく円となったこと、およびカネを金と表記する理由も、調べてみると面白いのではないでしょうか。

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