|
今は亡き、詩人、翻訳家、画家、批評家、学者であったケネス・レクスロス(1905-82)の15,000冊の蔵書が日本の千葉県にある神田外語大学に分類、整理されている。戦後彼の蔵書が膨大な数になりその大部分をスコット通り250番の別のアパートに保管することになった。1968年にサンタ・バーバラに引っ越した際に、このコレクションの一部は売却され残りはメンドシトのイースト・ペパー通りの広い家に移された。蔵書はその家の客間と彼が執筆活動に使っていた広い納屋のような書斎に分けて収納されることになった。もちろんレクスロスは自分の蔵書が死後日本に移されるとは想像だにしなかったであろう。たとえ日本を心のふるさとだとみなしていたとしても、この移動は驚くべき不思議な縁といえよう。彼は晩年を芭蕉、弘法大師、与謝野晶子の国で過ごしたいと願っていたのであるから。
レクスロスの蔵書をみると、この独学の博識を備えた天才とでもいえる彼がいかに多種多様の関心領域を有していたかが分かる。彼は確かな知識に基づいて、世界文学、哲学、宗教、アジアや西洋の文化、政治的イデオロギー、芸術、クラシック音楽、フォークロアなどのテーマについて執筆した。彼の蔵書はこれらの分野の専門家たちのみならず、これらの書物や思想に初めてめざめる若いひとたちにとっても宝庫といえるだろう。
それではレクスロス・コレクションは一体どのような経緯で日本にやってくることになったのだろうか。1982年6月6日の彼の命日から5年が経過したとき、このレクスロスの驚嘆に値する蔵書は、雄松堂の新田満夫氏の助けをえて神田外語大学に買い取られることになった。新田氏によると、レクスロスの原稿類をUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)図書館の稀覯書セクションの責任者であるD.S. Zeidberg(ザイドバーグ)氏との面談の後、新田氏はカリフォルニア州の書籍販売業者でありアジアの芸術に精通していたJ.S.Edgren(エドグレン氏)から1985年春にレクスロスの蔵書に関する情報を入手した。1985年8月にエドグレン氏の取り計らいのお蔭で、レクスロスの未亡人キャロル・ティンカー夫人はまだレクスロスの家に住んでいた時に新田氏をレクスロス・コレクションのところへ案内をしたのである。そこには天井までぎっしりと積み上げられた書物に加えて、彼が多くの詩やエッセイを執筆した大きな机があった。キャロル・ティンカー夫人はレクスロス・コレクションが売却されなければならないことを新田氏に伝えた。この家屋敷の一切合切を現金にしてしまうのに大変な痛ましい問題が山積していたが、これについてはリンダ・ハメイリアンがレクスロス評伝の中で詳述している。
現在レクスロス・コレクションは神田外語大学に分類・整理されているので、学者、詩人、学生や一般読者の人々の一助となることが可能である。欄外の書き込みの入ったレクスロスの蔵書の数々をみると、様々な作家たちに対して彼がどのような反応を示したのかが理解できる。そして彼の作品に触れたことがない方々もこの蔵書は貴重な情報知識源だと感じるであろう。哲学の教授であられる古田暁氏が、1999年のご退任時までレクスロス・コレクションの管理をされ、ジェイムズ・ヴィンセント教授が大学図書館のスタッフの方たちに手助けをすることによって、このコレクションの分類目録は出来上がった。そして前大学附属図書館長の山領健二教授と私は共同でこのコレクションの活用計画を練ることになった。
レクスロスの部屋には蔵書のみならず、彼がカリフォルニアでの大半の作品執筆に愛用した大きくて古い木製の机が置かれている。レクスロスは『短詩集』の「一月の夜」という詩(P.185)の中でこう書いている。「目の前の机の上に/タイプライターと紙がある」「そして私の美しい、角張った/水晶、頭蓋骨よりも大きい…..」レクスロスは、詩が心から湧き出ようとする時静かに水晶のことを想った。この水晶はレクスロスにとって一体どんな意味をもっていたのだろう。ウィリアム・ブレイクが一粒の砂に世界を観たように、レクスロスは宇宙の絶え間ない創造のプロセスを水晶に見いだしたかのようであった。彼はこう書く。「計りしれない/目に見えない 弾力性のあるもの/水晶は空間の子宮」(『花環の』」より「ドイツのハネムーン」p.15)
このような経緯を有する神田外語大学の「レクスロス・コレクション」を是非とも訪れていただきたいものです。その際は事前連絡をしてくださるようお願いいたします。ご意見、ご質問等ございましたら神田外語大学附属図書館までご連絡下さい。
.jpeg)
--------------------------------------------------------------------------------
A lecture at Kanda University of International Studies, November 12, 1994.
Excerpted from Revolutionary Rexroth: Poet of East-West Wisdom, Chapter 9,
"In and Out of the Academy." Copyright 2000 by Morgan Gibson.
Light & Dust Mobile Anthology of Poetry, Webmaster Karl Young:
http://www.thing.net/~grist/ld/rexroth/gibson.htm
Originally published in 1985 as an Archon Book by The Shoe String Press, Hamden, Connecticut 06514.
|